心地よい空間

 

この土日で、湯河原温泉に行ってきました。

湯河原は、確か中学の時に部活(テニス部でした!)の練習試合で何度か来たことがあったかな、というくらいで、ほとんど記憶になく、宿泊するのは初めてでした。

 

天候にも恵まれ、ゆったり電車の旅。

小田原から乗り換える、東海道本線から見える景色が好き。

 

いくつかのトンネルを越えて、湯河原に到着。

そこは、山に沿って佇む街で、過剰に観光地化されていなく、

自然が自然のまま在る、そんな場所でした。

 

道端にもスミレ、菜の花、山吹など色々な花が咲いていて、

きっと素晴らしくきれいであっただろうソメイヨシノには、柔らかな葉っぱがたくさん、

もみじには赤ちゃんの手のひらのように小さな、透き通る黄緑の新緑、

八重桜はふっくらとした花が満開。

 

小川のせせらぎを聞きながら、気持ちの良い空気を吸っているだけで、本当に癒されます。

 

 

 

宿泊した旅館も、最近泊まった宿の中では1番と言っても過言ではないくらいの、

真心と気配りの行き届いたとても良い旅館でした。

 

しっかりと着物を着たおかみさんが出迎えてくれ、部屋まで案内してくれたのですが、

廊下や階段には花がきれいに活けてあり、

籐で編んだ籠に入った間接照明がほのかに足元を照らす――。

 

そして何よりも良かったのが、「落ち着いた空間」でした。

建物自体は古いのですが、一目で掃除が行き届いているのがわかる、

まだ見ぬ宿泊客を思い、花を活け、水周りを曇一つなく磨き上げる、

そんな姿が目に浮かぶような、心地の良い空間でした。

 

お食事もお部屋でいただいたのですが、夕食も朝食も、一品一品とても丁寧で

本当においしかった。

良いお料理というのは、心までしっかりと満たしてくれるものだと改めて実感しました。

 

 

宿を出るときも、おかみさんが外まで見送ってくれたのですが、

最後におっしゃった一言が素敵でした。

 

「ほら、道端にたんぽぽがたくさんきれいに咲いていますよ」

 

澄み渡った青空でもなく、まぶしい新緑でもなく。

ああ、この人の目には、全て同じようにきれいに映っているんだ。

 

人を気持ちよくおもてなしするには、心地よい空間を創るには、

まず自身の心がきれいであること。

それを押し付けがましくなく、ゆるやかに感じることができたとても良い旅でした。

 

そして、またあんでぃとこうして二人で旅行するのは何年後だろうと思い、

新しく増える家族をうれしく思い、

いずれまた訪れる二人の時間を楽しみに思い、帰路につきました。

 

東海道本線から見える、少し霞んだ海を眺めながら。